PBW銀雨PC 御鵺つづらの日記です。
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アンオフィシャル設定です。 ここに書かれていることに関して、 御鵺つづらは、オフィシャル活動中この話題に触れません。 ご不快に思われる可能性のある方は、閲覧なさらないようお願い申し上げます。 「はい、にいちゃま」 そう言って、つづらはにっこり笑ってはさみを差し出した。 そろそろ日も暮れる。 いまだ夏とはいえ、夕方になると少し寒い。 赤く染まった障子。 黒い格子の影がさす中、つづらの手と刃が赤く照り返す。 「ざくざくっとね」 ひざの下まであるつづらの長い髪を切り落とせと。 漆黒の蛇にも見えるそれを切り落とすのは、途方もないことに思えて、 双子の兄のつくばは、途方にくれて妹を見る。 まっすぐ見ると、前髪に隠れてつづらの目が見えない。 いつの間にか妹を置いて、つくばの背は伸びてしまった。 今では少しかがまないと妹と向かい合うことも出来ない。 「あんまり短くしてもいやよ?後でねえやに揃えてもらうんだから」 こう。と、つづらは、ついっとうなじの辺りで右から左へ指を動かした。 「…それは、僕がやらなきゃいけないことかな」 取り返しのつかないことをさせられようとしてるのがひしひしと感じられて、つくばはつづらに確かめる。 「だめよ」 笑っているくせに、つづらの目は潤んでいる。 「最初のはさみを入れるのは兄ちゃま」 そういって、つくばの手に、はさみを握らせる。 「だって、兄ちゃまがそう決めたのだもの」 この髪を切ったら、つづらはこの屋敷を出て、遠くの学校に入る。 そこで戦闘三昧の日々に突入し、いつこの屋敷に戻れるかわからない。 この髪を切ったら、つくばはこの屋敷を出て、本家の養子に入る。 そこで戦闘三昧の日々に突入し、この先生きながらえられるかわからない。 そもそも、この次、いつ会えるかわからない。 生きているうちに合えるのか、会うことが許されるのか、いや、お互いが自ら二度と会わないと決めるかもしれない。 先のことはわからない。 それでも、今、離れ離れになると言うことだけはわかっている。 つづらの髪が二人をつなぐ絆のように思えて、それを切れ、早く切れとつづらに迫まられるのが、つくばにはとても切ない。 「きりたくない。本当にいやなんだ」 しょうがない兄ちゃま。と、つづらはつくばの頬に手を伸ばした。 「いやなら、あんなこと言わなければよかったのに。わたしは構わなかったのよ。本家に行ったって」 そしたら、つくばが学校に行けたのに。 戦闘三昧とはいえ、そこにはたくさんの普通の人がいて、山奥にひっそりと暮らしてきた二人が味わったことのない賑やかな学園生活というものが待っているのだ。 「本家につづさんが行くのは、もっとやだ」 おそらく今よりもっと窮屈な生活。監視の目も増えるだろう。 つくばはそれをつづらに味合わせるのはいやだった。 つづらを出来る限り自由にさせておくのが、つくばの望みなのだから。 そのためになら、もう会えなくなってもかまわない。 確かにつくばはそう言ったのだ。 それならば。と、つづらは兄の頬を指でつねる。 「決めてしまっているのでしょ。早く。日が暮れてしまうわ」 手元狂わせたら許さないわよ。と、妹は少し笑って念を押した。 「でも、つくばが独りで決めるのはこれが最後よ。わたしのことは後はわたしが決めますからね」 しゃきん。 最初の一房は驚愕と一緒に畳の上に落ちた。 「え、それは。つづさんのお婿さんは僕が選ぶよ。それは約束したから絶対だ。そもそも御鵺の跡取りの父親じゃないか。僕には口を出す権利があるよ」 「選ぶのはかまわないけど、それをわたしが選ぶかは別問題ですからね」 きゃあきゃあと言い合う。 合いの手のように、しゃきん、しゃきんとはさみが鳴る。 それが最後の戯れになるのを知っていて、二人でいつもでも愚にもつかないことを言い合った。 もう、それ以上、はさみを入れることが出来なくなるまで。 日が暮れて。 畳の上に長々と何本もの蛇が横たわり。 空に月が昇る頃には、もう、奥座敷に座って、ただ黙々と絵筆を滑らせている、しとやかな妹はいなかった。 「おかしくないかな、ねえやに切りそろえてもらったのだけど。首の後ろがすうすうするよ。このスカートもとっても短い。僕、こんなのはかなくちゃいけないのかな」 そう言って、障子を開けてつづらは小走りで入ってくる。 心なしかいつもより声が高めで早口だ。 くるくるとよく動く表情。 未視感と既視感が交互につくばを襲う。 「その話し方は何」 学校の制服を着せられてスカートのすそを気にしていたつづらは、つくばの視線に少しだけ目を泳がせた。 「あんまりおしとやかだと不自然だって言われたから。とりあえず、慣れるまで、僕よりは世慣れてるつくばの真似でもしようかと思って」 「真似は良いけど、僕って何さ」 つづらは自分のことを「わたし」と言う。 その聞きなれなさに、つくばは少し眉を寄せた。 「だから真似。まだうまく変換できないんだよ」 そう言って、つづらは、困ったなと、首を傾けて笑った。 それが自分の癖だと気がついて、つくばは 「つづさ…」 と、大きな声を上げかけた。 つくばの様子に大きく瞬きをして、つづらは慌ててパタパタと顔の前で手を振った。 「心配しなくても、慣れてきたら真似はやめるよ。本当言うと、今にも泣き出しそうなんだから、このくらいのわがままは聞いて欲しいな」 「ほんとに?」 「ほんとほんと」 うんうんと、つづらは何度もうなづいた。 それも自分の真似なのに、つくばは大きくため息をついた。 「あ、なんなら兄ちゃまも僕の真似をしてくれて構わないよ?」 「ごめんこうむります」 そういってしまってから、妹の口調によく似ていたのに気がついて、 つくばは小さくため息をついた。 PR |
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プロフィール
HN:
御鵺 つづら
年齢:
31
性別:
女性
誕生日:
1993/01/15
職業:
高校1年生
趣味:
絵画
自己紹介:
トミーウォーカーのPBW・シルバーレインに参加しているPC、御鵺つづらの日記です。
シルバーレインがお分かりにならない方の閲覧はご遠慮願います。 御鵺つづらは架空の人物であり、実在の事象とは一切関係ございません。
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