一番前で、たからかに。

　わたしは前線で声楽杖という棍棒を振り回す。
歌っているより殴っている方が多い。
衝撃波を発するより、相手の防御をかい潜って一撃をねじこんでいる。

それでも、間違いなく、歌うたいである。

　…思えば。
少し前は、忍者ではなく歌うたいだ。と、主張しなくてはならなかった。
後ろから、燕刃刀を振り回し、使うアビリティはブラストヴォイスばかりだった。
そうだったのは、燕刃刀が好きだったからだ。
手先が器用であればあるほど、あの武器は真価を発揮する。
単騎でＧＴに入ったとき、十分な距離をとってからブラストヴォイスで
薙ぎ払い、そのまま距離をとりつつ燕刃刀でしとめていくのは非常に合理的ともいえる。

　やがて、できることも多くなる。
この声が攻撃だけではなく、人を癒すことを覚えた頃。
私は、武器を声楽杖に持ち替えた。
チームの計算に入っている自分の能力を全うしないうちに、倒れる訳には行かないから。
歌以外のアビリティもきちんと覚えた。
　敵の一撃が時には戦闘不能になりかねなくなった頃。
そして、歌がときとして力量の壁に阻まれることもあることがわかった頃。
わたしは、防具をＨＰ重視に替えた。
届かないならば、届くところまでいけばいい。
この声を前線へ。
必要とする誰かの耳元で歌えるように。
そのためには、倒れることは許されない。
最前線で持ちこたえられる頑丈さがいる。

　わたしは前線で声楽杖という棍棒を振り回す。
歌っているより殴っている方が多いが。
それでも間違いなく、歌うたいである。

私が前線に立っているのは、歌を歌い続けるためなのだから。




…そういう訳なんだから。
ジャージでいいの。
これが一番丈夫な割に補助容量もおっきいんだから。
回避ボーナスもついてるし、今はこれが一番理にかなってるの。



　明日はＧＴに行って、次にレベルにあがったら着られる防具を探そう。
そうしよう。

あわわわわ。

　いけません。いきなり三日坊主～。
　中学三年生は忙しいのです。
ＧＴ行ったりとか、教室回ったりとか。
昨年度と一緒だって訳ではありません。
何しろ、クラスのほとんどが能力者。
去年もじわじわとクラスの子の顔ぶれが変わってたみたいだけど、
勢いが違う～。

　上には上がいるし、見てもきりがないのはわかるんだけど。
上れる階段は上る主義。
つづらは階の上ですから。

　…それはそれとして。
ねえやがおべんと箱ぎゅうぎゅうにごはん詰める。
腐敗防止のため、ずっと押し寿司ということになってるけど…。
普通の白いご飯がいいなぁ…。

それでも、未来がやってくる。

　今日のＨＲは『進路決めよーね!』でした。
「受験生だからね」といわれて、教室に満ちる生ぬる～い空気。
「高等部に入るの、無試験じゃんか～」
そーだ、そーだ。
「外部の高校を受験するのもいるだろう」
………。

　そういう選択肢もありましたね…。

　わたしは間違いなく高等部にいくんだけど、その後はどうなるのかな。
学校が終わったら、実家に戻されるのかな。
…自分で気づかず、今、受身形。

　わたしは、自分に必要になると思われる力や技術を蓄えたいなと思います。
　

葛城山から下りてきました。

　土蜘蛛戦争、終わったそうです。
「そうです」なんて言ってるのは、山中で戦闘していて、頂上の方から波のように「終結!」「女王は倒れた！」「終わりだ!」と声が聞こえてきたからです。

　…という訳で、夕方からバスに揺られて、今は温泉です。
さっきまで入ってました。とってもいいお湯でした。

…どうも、思考回路がどうにかして日常に還ろうとしているようです。
今この瞬間も、指はカタカタしていますし。後ろを振り返ると蜘蛛がいるようで怖いです。
我ながら、笑ってしまいます。

　わたしの日常は、武器を握ってわたしの敵をうち倒すことです。
それに、日常の敵も、非日常の敵も関係ありません。
風の噂に吸血鬼だの人狼だのが現れたと聞きました。
また、こういう戦いが起こるかもしれないと思います。

　わたしは。

もちろん怪我するのはいやですし、泣いてくれる人がいる以上死にたくなんかこれっぽっちもありません。
ゆえに、回避できる戦いは回避したいと思いますが。

　ゴーストに対抗できない誰かを、自分でもよくわからない内に犠牲にするような存在はどうしても我慢ができません。

わたしはそういう存在の天敵になりたいし、そうでありたいと思うのです。




　

新年度に際し

　中学三年生になったのを機に、日記なんてものを始めてみようと思う。
ちゃんと書き続けられるか心配だが、いけるとこまでがんばってみよう。

　とりあえずねえやに読まれないように、隠してみたりする。
ここなら、そもそもねえやの視界に入りもしなければ、指も入らない。

…こういうときには、小柄って得だ。
得なんだったら。